「ソロモンの指環 -動物行動学入門- 」 を読んで。
- 作者: コンラートローレンツ,Konrad Lorenz,日高敏隆
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1998/03/01
- メディア: 文庫
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<概要>
動物は私達人どれだけ本来の姿を見せてくれているのだろうか?
動物園などで見られる動物たちは、檻などのストレスによって本来の姿や生態を見せてくれていない場合が多い。ノーベル受賞者であり、この本の著者であるローレンツは動物たちを放し飼いに近い状態で飼い、ともに生活することで動物本来の行動や生態に迫った。
ローレンツの溢れる動物愛と、動物たちのユニークな行動や生態。
ローレンツは動物たちをこよなく愛し信頼関係を築くことで、動物たちの行動や生態を詳細に観察した。本の中では、動物たちのユニークな行動や生態がメインに描かれており動物たちの意外な一面などを知ることができる。加えて、ローレンツと動物の愉快なエピソードも多く、ローレンツのユーモラスな人間性も面白い。
<印象に残った箇所>
鳥には初めて見た相手を親として認識するなど、「刷り込み」と呼ばれる本能がある。
「刷り込み」は多くの人が知っているだろう。ある種の鳥は、生まれてはじめて見た生き物を親と認識する。また、ある期間に見たものを求愛対象として認識してしまう鳥なども存在する(本ではゾウガメを恋愛対象としてしまった鳥の話が記載)。これらの認識は一度刷り込まれてしまうと、生涯変わることはない。
鳥には、天敵を本能的に「知っている」種と、親から「教えてもらう」種がある。
カワサギやカモなどは天敵であるネコやキツネをたとえ初めて見ても、それが警戒するべき相手であることを本能的に知っている。一方、コマクガラスはこれらが警戒すべき相手であるかどうかは本能的にわからない。親や仲間に教えてもらうことで初めてこれらが警戒すべき天敵であることを知る。
喧嘩の際、鳩は相手を殺すまで止まれないが、狼は相手が降参すればそれ以上は危害を加えない。
平和のイメージが強く特に鋭利な武器を持たない鳩であるが、檻の中で鳩同士の喧嘩が始まれば片方が死ぬまで喧嘩は止まらない。一方、強力な武器をもち獰猛なイメージの狼は、相手が降参の意志を見せれば「本能的に」それ以上の危害を加えることができない。これは狼の場合、同種で殺し合って絶滅してしまうことを防ぐために本能的なストッパーが発達したのに対し、鳩は飛んで逃げることもできるため同種同士で殺し合いになる確率が少なく、そのためストッパーが発達しなかったと考えられる。
<感想>
・「動物行動学入門」といった学問的なタイトルであるが、文章を含め内容は非常にユーモラスなので楽しみながら読み切ることができた。
・動物の生態や行動について初めて知る内容ばかりで興味深く、勉強になった。
・ペットを飼う心構えやおすすめのペットなどにも触れているので、動物が好きな人はもちろんペットを飼うことに関心がある人などに是非オススメしたい一冊。